「新しい生活様式」が「変な校則」に見えてしまった。
(2020年5月8日)

カテゴリ:世の中いろいろ

相当気の早い話をすると、今年の新語・流行語大賞は「コロナ部門」と「非コロナ部門」を分けたほうがいいんじゃないかというくらい、いろんな言葉が飛び交っている。その多くは、実は行動の奨励や制限につながるもので、これが何に似ているかというともちろん戦時下だ。

これは広告研究でも重要な分野で、日本に限っても結構いろんな本が出ている。ただ、その頃と違うのは、国民が「ツッコミ」を入れられることだ。そう考えると、適度にツッコまれるというのも大切で、「三密」とかなんか有名タレントを連想して、それに本人が呼応してきちんと普及していったと思うのだ。

そう考えると、「新しい生活様式」というのが、もうタイトルも内容もツッコめないような感じで、久しぶりに「残念な感じ」だった。

いきなり「生活様式」というのも大げさで、なんで「生活習慣」と言わなかったんだろう。そうすると「生活習慣病」と似てませんか?とか誰かが言ったのかもしれないけど。

まあ見ていて、多くのものは「そうだろうな」と思うけど、時折妙なのがある。中でも一番気になったのはこれ。

「料理に集中、おしゃべりは控えめに」

いや、こどもの給食じゃないんだから。感染症予防からいえば「間違ってない」けど、「料理に集中」って、どうしちゃったんだろ。ああ、これは「変な校則」に近いんじゃないか。

「混んでいる時間帯は避けて」通勤して、「オフィスはひろびろと」って、そりゃ誰だってそうしたいしね。

まあ専門家の方は、とにかく「感染を減らす」ことについてはプロなんだろうけど、コミュニケーションや心理のプロではない。だから、聞いたほうが納得するようにチューニングしなきゃいけないのに、「事務局」がそのまま出しちゃったんだろうな。

いま、コロナ禍で起きているのは言語コミュニケーションの比重が一気に高まっていることだと思う。先の新語流行語的なものもそうだし、「要請」も言葉でおこなわれる。

オンライン会議は表情は身ぶりなどの情報量が限定され、言葉の重みが増す。テレビも遠隔の「顔出し」だから、体を張った芸は通用せず、言葉がキレる人が重宝される。

これからは、まず最初の「出口」に向かっていく大切な時期だ。そういう時に、練られていない言葉を発してしまうと、ツッコまれるどころか、背を向けられる。
で、そのうち「面白いときは、微笑で」とか言われちゃうのかな。オホホホホ。

というわけで、そろそろ仕事に集中、ネットは控えめに。

※「コロナと広告、消費者インサイト」という切り口で、レポートを書いてみました。これからの企業コミュニケーションや広告についての考察です。こちらのnoteにアップロードしているので、ダウンロードしてご覧ください。