自宅近くの、とは言ってもちょっと離れていて普段あまり行かないエリアに文房具屋がある。

この間、久しぶりに通ったらまだ営業していて懐かしくなった。

というのも、いまから15年ほど前にここで一度だけ買い物をしたことがある。履歴書を買ったのだ。

ちょうど40歳を前にする頃で、会社を辞める決断をしていた時だった。「辞める」と決めて、家族や親しい人に伝えたのはいいが、「この仕事までは」と頼まれたりして実際に辞めるまでには2年かかった。

そして、自分自身もまだ揺らいでいた。

何といっても、辞めた後の具体的な仕事の予定が全くなかったのである。

会社を辞めて仕事を始める場合、それまでの会社との取引を継続する人もいる。広告代理店のクリエイターの場合は、こういうケースも多い。クライアントの信頼があれば、所属に関係なく注文は来るのだ。

ただし僕は本社部門にいたし、そもそも広告ビジネス以外の仕事をしたかったので、それを当てにはできない。

そこで、いろいろ調べてみると「パートナー」のような形の社員を求めている会社があることがわかった。いまだと、「多様な働き方」として増えてきたけれど、当時は珍しかったのではないだろうか。

ちょうど自分のスキルが活かせそうな会社なので、応募してみるのもいいかと思った。

そして、ある日会社を休んで履歴書を買いに行った。 >> 会社を休んで、履歴書を買いに行った日。の続きを読む



ちょっと気が早い気もするが、なんとなく今年の仕事を振り返ったりしているんだけど、実はお盆の頃から9月いっぱいまでが、稀に見る忙しさだった。7月末から2週間くらい東京を離れて休めたのはよかったのだが、直後に申し合わせたように仕事の依頼が来た。

しかも、「中身の新しい仕事」が幾つもあった。

新たな試みをさせていただくのは、本当にありがたい。飽きっぽい性格で、同じ会社で4つも職種を経験して、40歳でフリーになったくらいだ。ゼロから考えるのは、やっぱり楽しい。

そして、忙しいとはいえ「頼まれる」ということ自体が、「ありがたいなあ」と改めて実感した。考えてみると、社会に出てから30年以上仕事のスタートは「頼まれる」ことで始まっていた。。会社員としてはスタッフ職だし、独立してからはコンサルタント的な仕事だ。

仕事っていうのは多面的なものだ。自分の仕事は、「売る仕事」や「作る仕事」だと思う人もいるだろうけれど、どんな仕事も根っこには「頼まれる」人がどこかにいる。そして僕の場合はオーダーメイドである。

その一方で、忙しくなるほど「いつまでこうして仕事を続けるんだろう」と思うことも増えてきた。

冷静に考えるた時に、フリーランスと言っても「生涯働く」という前提は成り立つとは限らない。自分で「引き時」を決めなくてはいけないと思ってる。 >> 「頼まれない生活」を受けいれられるのかな、と考えたりする年末。の続きを読む



実は、7月末から長々と休んでいて、お盆の頃だけ東京で集中して仕事したんだけど、さすがにいつまでも休めずにキーボードを叩き始めた。まだ、指が回りきってくれない。

で、ずっとTシャツ短パンで過ごす日々が続いていたんだけど、一応それぞれに「起きている時」と「寝る時」を分けている。

単にくたびれたシャツやパンツが「寝る時」に回るのだけど、一応これには理由がある。

自宅で、「仕事をするフリーランスは、同じ服を着続けてはいけない」という、勝手なルールを決めているからだ。

これは、会社を辞めた頃に遡る。

その頃住んでいたマンションに、とある文芸評論家の方がいた。表札を見てそう気づいたのか、何かの機会に声をかけて行き来するようになった。彼は、既に長いこと物書きとして仕事をしている。

自宅には天井までの本が並び、あまり外出は好まないようで、ずっと家にいることも多いようだった。

会社員の頃からお付き合いはあったのだが、辞める時にこんなことを言われた。

「山本さんは、家にいる時も朝起きたら着替えるの?」

つまり、休日などは寝ている時の恰好のままで過ごすのか?ということだ。僕は、特に予定がない時でも必ず着替える。なんとなくジャージで過ごすようなことはなく、寝る時はパジャマにする。

僕が「着替えますよ」と答えたら、その彼が「じゃあ、大丈夫だ」と言った。

なんで、そんなことを聞くのか?と思ったのだが、理由を説明してくれた。 >> 「フリーランスはパジャマに着替えるべき」という教えについて。の続きを読む



50代は社員は使えない。そんな記事がちょっと前に出ていた。

自分も50代で、別に会社員ではないけれど、ちょっと気になる。ただ、この手の記事の背景にはいろんな事情もある。

だって、ハッキリ言って「50代社員が素晴らしい」という時代があったんだろうか?延長されたとはいえ、基本的には60歳が定年で、その数年前に役職定年という会社も多い。役員になるのはごく一部だ。

50代の社員というのは、そもそもそういう立場になる。キャリアを畳む時期なのだ。そして、金融危機を越えたこの数年間の企業業績は全般に良好で、かつ人手不足だ。

そこで、かつてであればリストラされていた50代も、そのまま職場にいたりする。

そういわけで、そんな50代を責めなくてもいいじゃないか、と言ってみたいけれど、とはいえ50代にも問題はある。

それは、50代というか40代後半くらいからジワジワと「逃げ切り願望」が生まれてくることじゃないだろうか。

僕が30代後半の頃に、同僚と話していたことを思い出す。10年以上も年上の先輩のことを「彼は逃げ切ろうとしている」と言ったら、同年代の周囲が「そうそうそう!」と言っていた。 >> 「逃げ切りたいミドル」になりたくないなら、30代が大切。の続きを読む



毎春、大学の講義で「自分の買い物」を振り返って分析する課題を出す。

一つ買ったものを挙げて、「どのような情報などが影響したか」「そもそも、そのモノを買おうと思ったのにはどのような理由や気分があったのか」の2点を書いてもらう。

この提出物を共有しながら講義を進めていくと、いろいろな消費者心理の仕組みが分かってくる。

「バンドワゴン効果」とか「稀少性」とか、「準拠集団」などがどんな風に影響するのか?

ケースを見ながら翌週にテクニカルタームのおさらいをするのだ。

企業研修でもおこなうことがあるけれども、いきなりセオリーを教えるよりも遥かにスピーディに学べると思う。

で、今年の春に気づいたのは「バイトの収入が入ったから」というご褒美系が多かったこと。4月の課題なので、春休みのバイトは確かに関係しているんだけど、今年は妙に目立つ。そうか!アルバイトの時給アップはこういうところに来ているんじゃないか。ラウンドワンの業績がいい、という記事がちょっと前にあった。あのように若い客が多い業態だから、バイトの時給上昇が直結するという解説だった。 >> 『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』という理由はわかるけど。【書評】の続きを読む