毎年100万人生まれるということ。
(2012年3月27日)

カテゴリ:マーケティング
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大学でも企業でも、マーケティングのレクチャをする場合はたいてい人口の話から入る。
国内市場の話が多いので、当然少子高齢化や人口減少に関するデータを見せることからスタートしていくことが多い。
別にマーケティングの世界に関わらず日本の人口問題で話題になるのは、出生率である。これが1.2~1.4辺りで推移していることはよくニュースになる。
しかし、僕が気にしているのは率ではなく「出生数」である。なぜなら、市場の規模を規定するのは人の「数」だからだ。大規模な戦争や疫病のない限り、2011年に生まれた105万人(厚労省推計)が作る市場はかなり先まで見通すことができる。
そして、2011年生まれが減ることはあっても「2011年生まれが増える」ことはない。(移民政策が変更されない前提で)6年後のランドセル需要も、20年後の成人数もある程度読めるわけだ。
そして、出生数という絶対値を調べると意外な風景が見えてくる。
第一次ベビーブーマーはピークが270万人ほどで、第二次でも210万ほどだ。そこから比べると近年の「100万人+」という数字はたしかに少ないように思える。しかし、これを国際比較で見ると意外なことがわかってくるのだ。
2つの表を見ていただきたい。出所は国連のデータ(2009年だがこれが最新のよう)である。出生数を国別に上位から並べると、まずトップがインドで2700万弱、ついて中国が1800万強。1000万超はこの2カ国で、以下、ナイジェリア、パキスタン、米国と続き、日本は25位である。そして、その次からは100万人以下となる。(ちなみに同年の厚労省データでは出生は107万人である。経緯は現時点で不明だが論旨に大きく影響しないのでこの数字を使う)
さて、ここでは中間を略したが出生数の多いのは、概して新興国である。そこで、G8だけで抜き出してみると、別の風景が見える。日本の出生数は、米国、ロシアの次になるのだ。(それにしても先進国でこれだけ出生数が多いことに米国の底力を感じる)。
このデータはいろんなことを示唆している。


まず「年間100万」というのは、多いようだがマーケティング的には悩ましい。もっと人口(4.900万)も出生数(約45万)も少ない韓国の企業は、必然的にグローバルに活路を見出さなくては成長はない。国家戦略として、そういう危機感と割り切りもあるだろう。
一方、日本市場の規模は無視できないものの、明らかに供給過剰なので過当競争になる。結果として利益が出ない。
しかし、G8の中でこの100万という数字を見ると別の希望的な考え方もある。日本は毎年「100万人の潜在能力を生んでいる」ということだ。つまり、英国、フランス、ドイツなどよりも人的資源はまだまだ多いのだ。
では、どうすればいいのかというと、教育・育成がカギを握ることは明らかだろう。この100万人の潜在能力をどれだけ引き出せるかによって、日本の世界への影響力・発信力というのは高まっていく可能性があると思っている。
少子化は、時間軸では事実だが、数字の見方によっては別の可能性もあると思っている。