「笑っていいとも!」とフジテレビの30年。
(2013年10月23日)

カテゴリ:マーケティング
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「笑っていいとも!」が終わるらしい。
「タモリ倶楽部」は毎週見ている数少ないテレビ番組だが、こちらの方はさすがに見なくなっている。1982年のスタートというから、考えてみると自分が大学に入った年だ。ある意味続いていたことが不思議でもある。
ちょうど30年余りが経つわけだが、この番組が終わるのはフジテレビにとっても象徴的な気がする。
フジテレビは、ちょうどこの頃から視聴率を伸ばしてメジャーになっていった。「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンでテレビ自体の位置づけを変えていったようにも思う。
「笑っていいとも!」や「ひょうきん族」などのバラエティーと、いわゆる「トレンディードラマ」で、若年層のファンを増やした。簡単にいうと「お笑い」と「色恋」で視聴率を引っ張っていったわけだ。
もっとも、競馬やF1などのスポーツコンテンツも話題になったし、報道にも勢いがあった。日航機の御巣鷹山の事故で、生存者の存在をスクープしたのもフジテレビだったと思う。
90年代に入って日本テレビが視聴率の1位になることが目立つが、その後もフジテレビと日本テレビは僅差で年間視聴率を競っていた。
つまり、「笑っていいとも!」ともの30年余は、フジテレビの隆盛期とも重なるのだ。
それが、近年変化している。テレビ朝日の視聴率が伸びて、日本テレビと競るようになった。フジは3位で、かつ数字的にも離される傾向がある。もっとも売上げなどの数字は、まだ強いようだが。


かつて流行った言葉で「企業の寿命30年説」というのがある。30年で消滅する、というわけではないが、どんなに伸びていてもライフサイクルとして「次の何か」を見つけないといけないと話だ。
これは1983年の日経ビジネスで取り上げられた話なので、この説自体の寿命がちょうど30年になってしまうんだが、「思い当たる節」というのはたしかにある。30年というのは、人間の世代交代のサイクルにあたるからだ。
この30年間のフジテレビを支えてきた世代は、上が50代に入ってくる。既存の顧客が高齢化した時に、どう対応するかというのはマーケティングの世界では最も難しいテーマの1つで、フジテレビもこの難しいツボに入っているんだろう。
さらに上の世代は、在宅時間も長く世帯視聴率を気にする局にとってはありがたい顧客だ。一方で若年層は、総人数が減少しているけれども、一定の広告効果は期待しやすい。この両者を狙って編成したテレビ朝日と比べると、フジは割り切れないまま段々と顧客離れを起こしたように思える。
「笑っていいとも!」の終了は、大ナタの始まりかもしれない。ただ今後も視聴者総数が減少する市場で、この「30年サイクル」を跳ね返すのはかなりの難問に思える。