ナポレオンはやはり手ごわかった。
(2014年2月19日)

カテゴリ:見聞きした

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そして宝塚が100年である。めでたい。めでたいから、まずはナポレオンだ。
しかし、ナポレオンは手ごわい。近くにいてもあまり友達になりたくない感じだが、そういう意味ではなく、後世の人々にとっても手ごわい。
軍人としての卓抜さ、政治家としての手腕、そして意志に貫かれた個性。しかし、その功績は隣国からは悪魔の所業ともいわれ、晩年は悲惨でもある。後世、というか当時の文化人も翻弄された。ヘーゲルは彼に「世界精神」を見て、ベートーヴェンは“エロイカ”を献呈しようとした。
それから、200年余りが経ったが、彼を舞台で描くのは本当に手ごわい。一体、何を描きたかったのか?という思いが舞台を見た後も付きまとう。
ナポレオンの業績を横糸に、ジョセフィーヌとの関係を縦糸に、と書いて思ったけど、縦も横もよくわからないくらい、エピソードが多く溢れている。あまりにも多くの素材を料理しようとして、焦点の定まらなくなったコース料理のようだ。
猛女の姑と嫁、過去を遡る演出など「エリザベート」を彷彿させるところもある。そういえばタレーランはトートを連想する。
しかし、いかんせん相手はナポレオンだ。結局彼は何者だったのか。眠らない男、というだけでは物足りない。後ろの席にいた女性は「眠らない♪」という歌を聴きながら、眠気をこらえていたと話していた。たしかに、舞台としては単調なところもある。しかし、ナポレオンとはそういう存在なんだろう。バッサリとエピソードを整理して、女性関係に焦点を当てれば、それはそれで只のメロドラマになって、ナポレオンではない。
別に作者を責めるというより、ナポレオンの手ごわさを改めて感じらるための舞台なのか。
もっとも、演じる者たちの水準は高いし、柚希礼音は力技も含めてリードしていたと思う。登場人物も多いが専科まで含めて密度は濃い。
それだけに、100周年という重みと気負いが強く感じられる構成が少々残念。もっとも、100周年ラインアップは、まだまだ続く。どんな展開になるのか、楽しみだ。