スマホなしで、1人で飲める?
(2016年9月9日)

カテゴリ:世の中いろいろ

じゃあ、自分はどうかというと、1人で店に行って飲む。そもそも、スマートフォンを持っていないし。まあ、タブレットは殆ど持ち歩いているけど、連絡を見る時くらいだろう。

最近、1人で飲む人が増えてきたと思う。立ち飲みのようなカジュアルな店が増えたこともある。また二次会が減って、22時くらいから「落ち武者の集い」みたいになることもある気がする。

そして、スマートフォンも大きな役目を果たしているような気がする。

1人でメシを食うのを嫌う人もいるが、抵抗は減っているだろう。ファストフードなど、それを前提にしているし、大戸屋のように大きなテーブルにして、入りやすくしている店もある。

ただ、1人飲みのハードルはなかなか高かった。簡単にいうと「飲みながらどうするか」というのが、なかなかに難しい。

渋谷駅の近くに、立ち飲みの混んでる店があるのだけど、時折本を読みながら黙々と飲んでる人がいた。ただ、これも相当に野暮に見える。カフェとは、そのあたりが違う。

テレビのある店だと、まあ何となく間が持つ。昔ながらの居酒屋に、結構多い。

秋になると、欧州でサッカーのゲームが始まり、都心のバーでも外国人が集まって来たりするが、たしかに一人客をつなぐ触媒にはなるだろう。

ただし、そんな店ばかりではない。普通のバーで、1人で飲むとなれば、基本的には黙々と飲む。あとは、店の人と話すことになる。先方の手が空いてればそれでもいいのだけど、忙しければ、そうはいかない。

そうなると、淡々と飲む。もちろん手持無沙汰けど、これが試練だと思う。とにかく間が持たない。

僕は学生の頃から、1人で飲んでいて、この試練を経験した。本を持っていたこともあるけれど、何か違うと思い、結局はそこそこ話しやすい店を選ぶ。それでも、一人きりになることはあって、仕方ないから黙々と飲む。

ところが、スマートフォンは、絶妙だった。とりあえずの間はもつわけだ。

ここからは、単なる妄想なんだけど「1人飲みの時にスマートフォンは禁止」という条例とかがいきなりできたとする。禁煙条例みたいなものだ。そうしたら、みんなどうするのか。

家に帰る人も出て来るかもしれないが、それでも1人で飲みたい人だけが残るんだろうか。

スマートフォンが、1人で入れる店の幅を広げたことは、客にとっても店にとってもよかったと思う。

で、「1人飲みは好きだけど、スマホが手放せない」という人には、ぜひ「間が持たない試練」を経験することをお薦めする。意外なところから、会話が弾むこともあるし、旅先の見知らぬ街ならなおさらだ。

そして、酒を飲みながら沈思するということ自体は、また面白い体験だ。せっかく、お酒を飲めるのに、喋ったり眺めたりの時間しか経験できないのは、ちょっともったいない。

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