【2018年の本から/5月】やっぱり『ゴッホの耳』は傑作だと思う。
(2018年12月19日)

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やっと、5月。なんか年内に書ききれない感じになってきた。

この月はいろいろと面白い本があって、まずはバーナデット・マーフィー『ゴッホの耳』(早川書房)は、あの画家の「耳」がどのように削ぎ落されたのか?という謎に挑む。いや、これはミステリアスであり、かつ調べていくプロセスも面白く、しかもゴッホという画家の本質にも迫っていく。今年読んだ中でも、もっとも読みごたえがあった本の1つ。

海外のノンフィクションで、スティーブン・ジョンソン『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』(朝日新聞出版)は、『世界をつくった6つの革命の物語』の続編だけれど、これは2冊とも読むのがお薦め。楽器のキーボードと、いま使っているパソコンなどのキーボードの関係とか読むと、音楽というものがいかに技術発達と不可分な関係にあるかよくわかって、その辺が美術とはちょっと違うんだなと感じたり。

日本の小説では古処誠二『いくさの底』(KADOKAWAが、ちょっと意表を突いた設定で最後まで読ませるミステリー。第二次大戦のビルマの村における日本軍の中で起きる事件なのだけれど、これがある種の密室ミステリーにもなっている。雰囲気も含めて面白かった。

武内涼『敗れども負けず』(新潮社)は、短編歴史小説集だけれど、とても密度が濃い。上杉憲政を始め「敗れた者」の話だけれど、タイトルの通りそれだけでは終わらない。

長谷川櫂『俳句の誕生』(筑摩書房)は、あまりにも大きなタイトルだけど、読むと納得する。僕は俳句には疎いので、著者の作品を慌てて遡って読んだけれど『俳句の宇宙』を読んで、さらに納得。こういうことを知っていれば、というか教えられれば俳句の見方も変わるだろうな。

原雄一『宿命』(講談社)は、「警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年」という副題の通りで、あのオウム真理教の捜査の真っ最中に起きた衝撃事件の“真相”を元刑事が語った本。

この手の本は、いささか「怪しいんじゃないか」と思うことも多いだろうけれど、これは「恐らくそうだったんだろうな」と感じる。

ビジネス系で面白かったのは海老原嗣生『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』(イースト・プレス)は、とてもロジカルに本質を突いている。ただ、こういう本より「なくなる!」と言った話の方が受けてしまうのが、いまのビジネス界隈の現実なんだろうけど。

ドストエフスキーの悪霊は一気に読んでしまった。短く言おうとする「やっぱ、すごかった」とか子どもの感想文になるので書かないけど、訳も素晴らしいと思うので関心のある方はぜひこの機会に。