【青学講義覚書】会社選びでは「女性がイキイキしているか?」が大切。
(2020年1月22日)

カテゴリ:キャリアのことも

[この内容は先日青山学院でおこなった講義の最終回で学生から就職活動を含む広い質問を受けた時に答えた内容です]

 

会社選びの基準、というのはたくさんあります。まず「やってみたい仕事」はもちろんだし、待遇も重要でしょう。その企業の業績や将来性、あるいは社風などもあります。

そんな中で最近、私が気にしているのは「女性がイキイキとしているか」という視点です。そういう会社は女性にとってだけではなく、男性にとっても「いい会社」だと思うのです。

なぜか?結論からいうと、そういう会社は「環境変化を先取りして動いているから」ということです。それは、企業が成長する上で欠かせない条件です。

さて、具体的に考えてみましょう。たとえば女性が働いていくうえで「産休」「育休」ということは、大きな課題の1つです。多くの企業が制度を整えていることは知っていると思います。男性の育休も話題になりますが、産休も含めてまずは女性の環境を考えることが大切です。

ただし、単純に考えると企業としては出産や育児のために貴重な戦力を一時的に失います。敢えて「戦力」と書いたのは、そういう発想をしている人が多いからです。そういう考えだと、その「戦力」を埋めようということになり、当然周囲の誰かが肩代わりする。あるいは、そうした休暇を見越して増員する。そうすれば結果的に生産性が下がることもあるでしょう。

いくら制度を整えても、こういう発想では結局女性社員はイキイキできません。出産や育児を経験してかつ成果を挙げるためには、並外れた努力やセンスが必要になる。そうなれば「相当実力のある人」しか残っていけないでしょう

一方で、本当にいい会社であれば女性の休暇を「戦力減」とは考えないはずです。全体の人的資源が減少するなら、それに合わせ仕事の流れを見直せばいいのです。多すぎる会議や、冗長な意思決定システムを変える。積極的にフレックスタイムやリモート勤務を導入する。権限を譲っていく。

どれも、聞いたことはあると思うけど、「本気でやる」企業は少ない。特に伝統的な企業は制度を作るのは得意だけど、そこで終わる。いまの時短をめぐる動きも同じです。

つまり、女性がイキイキしている企業は環境変化を先取りして、仕事の方法を常に変えようとしている。もちろん男性の育休や、男女問わず介護休暇なども取得しやすくなります。そういう企業は、経営全体に柔軟性があるし、ビジネスをめぐる環境変化も乗り切っていくでしょう。

そういう視点で考えると、「女性がイキイキしている会社」は、誰にとってもいい会社である可能性が高いと思うのです。

ただ、このような「選び方の基準」があること自体は、もちろん良くははない。なぜなら、それだけ日本の職場にはまだ偏見があると思うからです。それは制度の充実だけでは測れません。

ちなみに「女性が働きやすい会社」ランキングなどもありますが、ああいう指標は何をデータにするかで大きく異なるので、参考にはなるかもしれないけど、敢えてコメントはしません。それよりも、実際にいろいろな人に会ったりしていく中で、肌で感じる感覚を大切にしてほしい。
だから男性も「OG訪問」すると、新たな発見があるかもしれませんよ。

 

【追記】ちなみに女性がイキイキしている会社はいわゆる「日本的集団主義」ではないことが多い。そもそも日本人は集団主義か?という問いかけの本もあるんだけど、こういうのを読むと「日本人だから」というより「男性ばかりの均質な日本人集団」の問題じゃないかという気もする。