フジテレビがダメなのは、もちろん震災のせいではないわけで。
(2015年11月30日)

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フジテレビの亀山社長が、記者会見で今の不調を語る中で東日本大震災に言及したらしい。
「日本の意識がいろんな意味で変わってきたのが(東日本大震災の)“3月11日”じゃないかなと。今までの我々がずっと押し出してきたわくわく感、ドキドキ感や、少し浮世離れしたお祭り感というのが、どこかで絵空事に見えてしまうようになったのではないかと」

そうした中で、日本人の意識の変化をくみ取ることができなかった、という反省らしい。

しかし。

言い訳や分析はいろいろあるけど、これは相当に苦しいと思う。経営者の弁明は仕方ないけど、久々に筋が悪いと思った。

震災の直後はともかく、その後にみんなが求めたものは「わくわく」や「ドキドキ」ではなかったのか。NHKの「あまちゃん」は、あえて被災地を舞台にしながら「浮世離れしたお祭り感」を描いて話題になった。

まったく、ズレていると思う。

それに、あの震災で被災しながらも言い訳をしないで努力している人はたくさいるだろうに、4年も経ってから「やっぱ震災が」と東京の経営者が言っていること自体が、すごく変な感じもする。別にフジテレビに多くを期待するわけではないけれど、なにも経営者が先頭に立って「ダメな感じ」を振り撒くこともなかろうに。

いろんな理由はあるだろうけど、フジテレビの不調は、かつてのように「情報格差」を逆手にとった番組作りが通用しないことが大きいと思う。テレビ制作側の「業界」はかつて、圧倒的な情報優位性を持っていた。
コント番組で、観客ではなくスタッフの「内輪笑い」をうまく活かしたのもフジだった。「そこで受けるんだよ」と視聴者に教えていたのである。

そうしうた情報格差が通用しなくなった象徴が、2012年の「アイアンシェフ」だったと思う。「料理の鉄人」を復活させようとしたのだろうが、もはや「鉄人」偶像化して、挑戦者を持ち上げるのは無理だった。検索すれば、その店の評判などがネットにあふれる時代なのだ。

「料理の鉄人」は1993年に始まって、99年に終了している。ネットが本格化する前に、マスメディアがまだ情報優位を持っていた最後の番組だったのだろう。

そして、「笑わせる芸人」より「笑われるタレント」が重宝される。「知らない」ことが売りになるタレントと、「なんでも知ってる」池上彰が成り立つのだったら、もはやテレビ局の業界人から教えてもらう必要はないのだ。

「もう自分たちは何も知ってないし、わかってないし、進んでない」

マスメディアでも、それを自覚した組織は生き残るし、そうでないところは本当にきつくなる。フジテレビはその象徴なのだと思ってる。