これぞ娯楽の王道。宝塚のルパン。
(2015年2月25日)

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lupin

宝塚歌劇団 雪組公演

ミュージカル『ルパン三世 ―王妃の首飾りを追え!―』

原作/モンキー・パンチ脚本・演出/小柳 奈穂子

ファンタスティック・ショー 『ファンシー・ガイ!』

作・演出/三木 章雄

2015年2月24日 東京宝塚劇場

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宝塚歌劇の出し物にはいろいろと流れがある。完全な書き下ろしのオリジナル脚本、欧米のミュージカルの輸入物、そしてコミックやアニメの舞台化という感じだろうか。輸入物では「エリザベート」が人気で、コミックの舞台化は「ベルサイユのばら」が有名、というかこれは宝塚100年を代表する作品だと思う。

この原作も最近はゲームなどにも材を求めていて「逆転裁判」や「戦国BASARA」などが上演された。そして「ルパン三世」と来たわけだが、これは相当に手ごわい。人気原作ほど、粗探しをしたくなる人も多いから。

で、結論からいうととても楽しめた。冒頭は現代。マリーアントワネットが持っていた「王妃の首飾り」を盗もうとしたルパンと一行が、フランス革命前夜にタイムスリップ。ここで、王妃に出会うわけだが、当然彼女の運命は誰もが知るところ。

宝塚はベルばらを初めとして、フランス革命前後を舞台にしたものが近年とみに多いようだけど、マリーアントワネットは相当に「かわいい女」として描かれている。フランス革命はどういう視点で描くかによって、人物像も相当異なるけど、最近の宝塚はロベスピエールに悪役にまわってもらうようだ。

錬金術師として登場するカリオストロはアルセーヌ・ルパンとも縁深いが、三世にもゆかりがあるのはご存じのとおり。多少の意外性を持ちつつ、落ち着くところに落ち着く安心感。アドリブの笑いもあるが、昨夜はトップが台詞を噛んで、そのタイミングがまた絶妙。

観客には男性も多く、休憩後半にトイレへ行ったら列があったのは初めての経験だった。

演目が演目だけに、女性に連れてこられたり、男同士、あるいは一人で来ている客もいる。おもしろいことに、ロビーの会話を聞いてると男性たちは「リアリティーが」云々と言ってるし、後ろの席のカップルも男の方が役作りの細部に疑問を呈している。

宝塚で「リアリティ」を語る。おいおい、それを“野暮”というのだよ。

なにも構えて見ることなく、どっぷり楽しめる安心感。これこそ娯楽の王道。今日も宝塚は別世界なのだった。