想像以上の入門書「ワイン一年生」
(2016年3月25日)

カテゴリ:読んでみた

51oMrVNPrrL日曜の夕方、家で食事する前に隣の駅まで1人で散歩して、ふらりと知らない店に入った。

カウンターでビールを飲みながら、新じゃがのポテトサラダをもらう。長ネギかと思ったら「高菜」だという。新玉ねぎと鶏胸肉のマリネで、山形の白ワインと続けて、そのまま居座りたいくらいだったのだが、食事の準備も進んでいるので帰宅することにした。

シェフの腕も並べているワインのセンスもいいなと思ったのだが、その店にあった本が、この「図解ワイン一年生」だった。

僕は、なぜか人からワイン通と思われることが多いのだが、あまりよくわかってない。理由はわからないが、よく行く店でも勝手にそう思われてるので、とにかく何を言われても頷くことにしているのだが。

というわけで、ワインの本は一冊も持ってないし、手にとってもやめてしまっていたのだけれど、この本はすぐに買ってしまった。なんか読み物として楽しいのである。

幾つか特徴があるけど、まずはブドウの品種をキャラクター化していること。まあ、「優等生」「やんちゃ」くらいの比喩はあるが、この本は徹底している。そして、ちゃんと絵になっているので、ところどころにコミックでショートストーリーが挟み込まれる。

カベルネ・ソーヴィニヨンが優等生の男子で、シャルドネが人懐こいみんなのアイドル、という辺りはまあありそうだが、ミュスカデが「いつも服が汚れているさわやかドジ男」だったり、ジンファンデルが「ダイナミックで気のいいアネゴ肌」というところまで徹底しているのがすごい。

というか、この手のキャラがダメだったら、もうこの本には馴染めないと思うが、僕はスッとわかった。優等生のカベルネが米国にわたって、マッチョになったりするのもおかしい。まあ、マイナーな品種になるとちょっと大変そうにも見えるけれど。

また、この手の解説書にありがちな「一生懸命順を追って教えます」という感じじゃないのがいい。著者が自分でいろいろ考えたり迷ったりしたことが、正直に書かれている。教科書的ではなく、ストーリーがあるのだ。

そして、この著者は文章が存外に達者だ。ワインへの思いが嫌味にならずに、ちゃんと伝わってきて、「ああ、ワインは楽しいな」と思わせてくれる。ワインを語る人は、どこか気宇壮大になり過ぎて、傍から見ると滑稽に感じることもあったりするが、そうした気負いがない。

でも、「おわりに」の文を読むと、ワインや食への愛が伝わってくる。

この本を読んだ後、書店で類書を見たけど、まず読むならこれがいいんじゃないかな。ただ、フランスからスタートして、そこを基準に各国のワインに言及しているのは留意が必要かとは思う。もっとも、そういう事典的なバランスを求めるなら他にもいろいろあるわけだし、その辺りは分かりやすさのための構成だと思う。

ちなみに、僕はこれをkindleで買ったし、外でサッと確認するにもいいように思うけど、iOSのkindleだと栞と検索の機能が使えない。目次をプルダウンすれば目的の頁はさがせるのだけど、念のため。でも、電子書籍に向いてるかも。