【歳末本祭り】グラス片手に冬の夜を楽しむなら。『絶対に行けない世界の非公開区域99』
(2015年12月13日)

カテゴリ:読んでみた

61ugw7cDaDL._SX380_BO1,204,203,200_[読んだ本]ダニエル・スミス著,小野智子・片山美佳子(訳)『絶対に行けない世界の非公開区域99』(日経ナショナル ジオグラフィック社)

 

毎年のことだが、幸いにして忘年会もまったくなく、マイペースで仕事と読書と整理ごとに明け暮れている。そこで、ちょっと気が早いが、今年読んだ本を折を見てピックアップしてみようと思う。新作から古典までなので、別に2015年のレビューというわけでもないけれど、年末年始の読書計画の参考にでもなれば。

というわけで夏に続いて「歳末本祭り」の第一弾は、写真集というかまあ一種のビジュアル本。タイトルからしておどろおどろしいが、内容は至って正統派。ところが読むほどに、「書かれていないこと」への妄想が膨らむ一冊である。

ナショナル ジオグラフィックは、定期購読している数少ない雑誌だ。美術手帖を止めたので(倒産には驚いたが)、あとは「料理通信」くらいになってしまった。

ナショナル ジオグラフィックは、「大自然の写真」というイメージが強いが、記事の切り込みも相当ユニークだ。「教皇のバチカン改革」などのインサイドレポートや、「おいしさの科学」のような読み物まで幅が広い。

単行本もなかなかに魅力的で、同誌のかかわる写真展などに展示されている本を眺めていると衝動買いを抑えるのに苦労する。

この本は、世界各地の「非公開区域」に迫っていて、空撮地図などを駆使してその実態に迫ろうとしている。ただし全部で99取り上げた区域を200頁あまりにまとめてあるので、それほどに深い記事ではない。

むしろ、タブレットを片手に「なんだ、それ?」と検索しながらいろいろ調べてみる楽しみがある。お酒でも飲みながら、冬の夜にゆっくりと眺めるのに最適な一冊だ。

読んでいくとまず多いのは米国の軍事・情報関連施設。CIAやペンタゴンに加えて、「エリア51」なども載っている。

また、50年以上前に炭鉱火災の鎮火に失敗して今も「燃え続ける町セントラリア」や、蛇だらけの「ヘビ島」など入るには命の引き換えというエリアもある。

英国女王の寝室や、バチカン機密文書館などの秘密の部屋もあれば、カシミールの停戦ラインやガザ地区の密輸トンネルなど、今も紛争が続くエリアの実態も紹介される。

さて、日本はどうか?というと実は一か所だけある。書いてしまえば、「ああ、なるほど」という感じかもしれないが、これは読んだ時の楽しみということで。

でも、それを見た時の感想は結構似ると思うよ。

「ああ、日本は平和だな」と。