「インスタグラムでセルフブランディング」にしみじみする。
(2017年6月9日)

カテゴリ:マーケティング

今どきのメディア行動、みたいなテーマの記事を読んでいたら、こんな意味のことが書いてあった。

「インスタグラムに写真をアップすることで“セルフブランディング”になる」

いや、たしかにインスタグラムの影響は大きい。大学生、特に女性に自分の消費行動を振り返ってもらえばすぐわかる。見栄えのいいものを食べたくなり、「死ぬまで行きたい」絶景を見たくなる。

それも、インスタグラムという「出口」があるからだ。それが消費に結びつくのはよくわかる。外食は、まず見た目優先。メシも見た目が9割だよ。

ただ、それが“セルフブランディング”とかになるのか。もし、ブランディングというものにちゃんと関わって、おカネを頂いた人なら苦笑するだろう。でも、仕方ない。いつの間にか、「自分を良く見せる」ことがブランディングになってしまった。

特に「セルフブランディング」と言うことを唱える人は、そう思っているようだ。

「ブランドは見た目を決めればいいわけではありません」

広告会社は、そうやって企業に説明を重ねて、「ブランディング」をそれなりのビジネスにしてきた。単にロゴや広告でおカネを頂くわけにはいかないから。

でも、まあいつの間には自己啓発系の人が「セルフブランディング」を唱えるころから、ブランディング自体もインフレを起こして、まあそうなれば「インスタグラムに写真アップして、セルフブランディング」になっても、そんなものなのか。

と思ってよく見たら、大手広告代理店の人が書いた文章だった。うわ、そうだったのか。ブランディングのプロフェッショナルも、そういう風に考えるんだなあ。

だったら、いまクライアントの企業に対して「ブランディング」をどう説明しているんだろう?

「毎日社員食堂のメニュー写真をアップして、御社の企業ブランドを向上させます」

いや、それはないだろと思いつつ、ふと感じだ。

いや、もはや”ブランディング”はそんなものになってるのかもしれないな、と。

企業ミッションをや行動姿勢やらをこねくり回すより、「働きやすい職場」であること、少なくてもブラックでないこと。そして、その時のニュースになること。そういう情報の断片みたいなものが、いつしかブランドのように見えてくるのかな。

情報は爆発的に増えても、人の記憶容量は変わらない。そして、人々の長期記憶に入り込んで、指定席を確保しているブランドの数もそうそう増えない。そういう環境では、企業のブランディングもたしかにきつい。

しかし、それは結構前から起きたことかもしれない。「ブランドディングの極北」として「まいばすけっと」について書いたブログはもう6年前のことだった。

とはいえ、企業にとって「ちゃんとした」ブランディングはまだまだ必要だと思う。じゃあ、それは誰が担い手なんだろう。

「インスタグラムでセルフブランディング」に突っ込むつもりが。しみじみしてしまったよ。