「住む」と言えばいいのに、「住まう」と書くのはマンション広告の常識のようになってしまった。個人的な記憶だが、関西出身の方から「どちらに住まわれているの?」と聞かれた経験はある。

だから、西の方の言い回しかと思っていたが、どうなんだろう。ただ、広尾には「住まう」ようだが、「大字狸洞」だったらどうなのか。「住まう」はどことなく上品な感じだが、会話ではまず聞かない。

こうした、ある種の「文語表現」は、ネットの広まりとともに目立つようになった。典型は「食」に関する言い回しだろうか。

「食す」というのは、「住まう」に近いのかもしれないが、文語的でどこか上品だ。ネット上にやたらと食事についての投稿で増える中で出てきたんだろうか。食べているものも、ちょっと上品で鮨やフレンチというイメージだ。

「食らう」というのは、ちょっとぞんざいな言い方になる。「喰らう」という表記もあるが、焼肉やお好み焼きとか、ガッツリした食事のイメージか。「パンナコッタを食らう」とか言わないだろうなあ。 >> 食す・食らう・食わせる、とかの言い回しが気になる。の続きを読む



土曜日の午後、右手の親指の傷を気にしながらテレビを見ていた。

木曜の夕食を作る時にスライサーで切ってしまい、痛みは薄らいだのだがムズムズとした違和感がある。

そして、テレビでは九州の被災地のようすを朝から報じている。いわゆる「本震」が想像以上の被害をもたらしている状況が次々に映し出されていた。

困窮もあれば、心理的不安もあり、もちろん肉体的痛みもあるだろう。しかし、画面の向こうで起きているすべての混沌を合わせても、自分の指先のごく僅かなムズムズした痛みの方に明らかなリアリティがある。

そのどうしようもない距離感のようなものが、妙な不安感を増幅させる。(大変だろうな)と思うほど、自分の指先が妙な主張をする。(痛みはここにしかない)と、自分の指が言っているように感じてくるのだ。

大災害が起きるたびに、僕はこの奇妙な距離感と向き合うことになる。

テレビを見ることを止めて、いつも寄附をしているNPO団体のウェブサイトから手続きをする。早急に動く体制をもっているので、即効性が強い。既に物資を届けたことも、今日のウェブサイトで確認できた。 >> 災害の後、「頑張ろう」に乗れなくてもいいと思う。の続きを読む



IMG_1520桜が散って行く。

今日は天気が良かったので、近所を歩きながら花吹雪を眺めた。自宅の部屋から街を眺めると、あちらこちらに桜が見られる。公園もあるが、立派な桜のある個人邸も結構多い。昭和の風情が残る住宅地ならではの光景だ。

大きな公園の桜よりも、こうした一本桜を眺めながら街を歩くのが、毎年の習わしになっている。

それにしても、最近は桜の開花を心待ちにして、それを喜ぶ空気は近年に一段と強くなってきたと思う。

もちろん、計量できるものではない。全体的に高齢化が進むとそういう感じになるのかもしれないが、スマホのカメラを向けている若い人もたくさんいる。

たしか1990年代後半に東京ウォーカーが桜や紅葉の特集をやり始めた。映画や演劇など「人工的なエンタテインメント」を網羅した“ぴあ”から、流れが変わったなぁという話を会社の同僚と話したことを覚えている。

それにしても、なぜ桜に惹かれるんだろうか。

もちろん、花の美しさはある。ただ、それ以上に何か心を動かす不思議な力があって、それは他の花にはないように感じる。

よく散り際が美しく、それが無常観や死のイメージを喚起させるという話も聞く。ただし、それは西行の歌や梶井基次郎の影響かもしれない。

僕は満開の桜を眺めていると、なんか「いろいろなことが赦される」ような感覚になる。氷が溶けて、水も温んで、風も爽やかな春の日に、花が咲く。眺めているだけで、ふと俗事を忘れる。じゃあ、原稿が遅れた時の言い訳にこんなのはどうだろう。

「すいません。桜があまりに美しくて」 >> 桜って、すべてを赦してくれるような気がする。の続きを読む



 

今年になって、毎日ブログを書いてみた。

前からやってみようと思ったのだが、キリがいいので始めてみた。そして、ちょうど3か月が経った。

大きな理由は、「毎日違うことを考えてみよう」ということにあった。1月1日に書いたのだが、「歳をとると時間が早く経つ」理由の1つは「恒例のこと」が原因だと思ったのだ。

「今年もここに来た」とか同じことをしていると、記憶が同じフォルダに入れられる。

「定例の仕事」ばかりだと、スケジュールは埋まっていくが、それをこなしてあっという間に時は経つ。

だから、毎日いろんなテーマでブログを書いていくというのは、「毎日を違うものにする」という意味ではいいように感じたのだ。

僕が書くのは、テーマもバラバラだ。マーケティングやメディアを論じたものは、結構多くの人が読むこともあるが、能舞台の感想などはタイトルを見ただけで通過されているようだ。

だから、毎日違うことを考えるのだが、これはよかったと思う。

何となく時間が経つのではなく、1月からの歩みをハッキリと意識しての3月だ。ブログを書くのは、自分でコントロールして時間をつくることになる。何となく追われて時間が経つのとは、ちょっと違う。 >> 毎日ブログを書いてみたら、時間の流れが変わった。の続きを読む



というわけで、3月も終わるので今回も1か月の振り返りを。

押し迫った30日に鴻海がシャープ買収を決定して、東芝は白物家電を美的集団に売却した。親が用意した縁談を振り切って、それぞれの道を歩む春なのであった、という感じではない。

そもそも、シャープが態度を決めたのは2月25日のことなので、その後の精査に一か月くらいかかったことになる。いずれにせよ、国内資本の白物家電大手は4社となった。ただ、三洋の場合はブランドがなくなったが、東芝はブランドが残る。新しい経営陣がどのような戦略を立てていくのかは興味深い。

政治的には、衆議院の解散や消費増税の再延期などが囁かれてきた。ただし、この手の政局の動きは報道によってもバラバラで、どこか霧がかかったような感じだ。その中で「民進党」が発足して、予算はアッサリ成立した。

国内では、相変わらず週刊誌発のスキャンダルが連発されている。経歴詐称や不倫など、内容自体は定番ではあるものの、キャスター就任や参院選出馬などのタイミングでビシッと刺された感じだ。

というような話が目立つ国内情勢をよそに、欧州近辺の動きは相当に激しい。ベルギーの空港でのテロがあり、ドイツ地方選挙ではメルケルへの批判票が目立った。一方で、フランスはテロ対策を念頭においた憲法改正を断念するなど、しばらくは中東からの強風に悩まされそうだ。

米国大統領選は、共和党でトランプがまだリードを保っている。競馬でいうと、まさかの大逃げが3コーナーを回ったあたりで相当のリードを保っている感じだ。共和党内部では、早くも「審議」前提での動きもあるようだが、現在2番手のクルーズも主流とは言い難いし、いろいろとアタマが痛いだろう。

一方で民主党ではサンダースが食い下がっている。トランプと同様、白人からの人気が強いのは、現在の米国の変化を象徴しているように感じる。 >> 3月が終わるので、今月の振り返りなど。の続きを読む