出生転出入近所のスポーツクラブに新規会員受付窓口の待ち時間が「40分」になっていた。少し前は「20分」だったが、もうすぐ「60分」という掲示になるだろう。3月から4月は、そうした節目の季節だ。

日本の春は、出会いと別れの季節でもある。というのは昔からの常套句だが、それもエリアによって大きく変わっている。東京などにいれば、出会いも別れもたしかにあるけれども、多くの地方では「出会い<別れ」だ。都道府県ごとの転出入の数字を見ればすぐにわかる。

で、いろいろ数字を見ているうちに「転入超過数×出生者数」で都道府県を分析すると、そのエリアの「勢いの絶対値」が見られるんじゃないかと思ってこんな図を作ってみた。出典は総務省統計局の「日本の統計2016」だ。データは2014年で、昨年の数字も出ているのだが、加工の関係で一昨年のものだ。まあ、傾向値としては十分だと思う※

日本の人口が全体として減少しており、地方に行くほどそれが顕著であることはよく言われている。その原因は少子高齢化で死亡者数が増加していることが大きな原因だ。

ただし、今後を占う意味では出生者数と転入超過数に着目してみたらどうか?と考えたのだ。 >> 「出生者数×転入超過数」で見ても、東京は特異だった。の続きを読む



pan2ヤマザキ春のパン祭りが始まっている。フランスでも有名で、皿を作る町が好景気に沸くとか、そもそもそんな話はないとか、まあそれはともかく、本当にどんな効果があるのだろうか。

ウィキペディアの「ヤマザキ春のパン祭り」はなかなかの力作で、それによればスタートは1981年だという。『ヤマザキにとって、春はパンの売り上げが伸びる時期であり、売り上げが伸びる時期に合わせてパンまつりを開催し始めた』とあるが、『ただし、今となってはパンまつりの効果で春に売り上げが伸びるのか、春なので売り上げが伸びるのかは不明である』と書かれている。(この辺りの記述はウィキペディア内に出典が記されている)

どうやらパン祭りは、高校生の頃から始まったのだが、なぜか個人的にはまったく縁がない。まあ、それはいいとして、本当にどのくらい売り上げが伸びるのかを調べてみた。

出典は総務省の家計調査だ。このデータは、よくテレビ番組でもネタになるが、その多くは都道府県別のデータのようで、「餃子日本一」とかその手のものは大体ここが出典だ。

で、この調査は結構いろいろ使い手があるのだが、今回は月次でパンの購入量を追ってみた。2015年も出ているのだが年報になっておらず、調べるのが面倒なので横着して、2013年と2014年でザックリ傾向を見てみたのがこのグラフだ。(数量で単位はグラム)

なんと、見事に3月にグイッ!と上がっている。

ちなみに、食パンと他のパンは数量ではほぼ同じで推移している。 >> パン祭りでパンはどれだけ売れるのか?の続きを読む



先日学生たちと就活のことで話す機会があって、いろいろと質問を受けた。ところが、妙な都市伝説のようなものが結構多い。

「メーカーではスーツの色は黒がいいと聞いてますが」

「銀行員の前で、“公務員受験を考えていた”と言ってはいけないんですよね」

みたいな話だ。銀行員は公務員を嫌っている、という話だが、出所はよくわからない。この手の噂は年々増えている。スーツの色についても不明。

この手の「真実の話」ほど、真実から遠かったりする。大学生が世間を知らないから、というのではない。齢をとっても、妙なものに嵌る人はたくさんいる。

スーツの色で思い出したけれど、新入社員へのアドバイスの記事で「米国大統領」を持ち出していたものがあった。結論として紺かグレーを選ぶべき!という一般的な話なんだけど、そもそも新入社員が大統領の服をまねる必要性がどこにあるのかいな。

それより自分の似合うものを選べばいいと思うんだけど、それじゃ記事にならない。つまり、フツーのことをフツーに伝えても目立たないのでそういう話になるんだろう。

その手の記事づくりが増えるから、ネット上には「○○すべき」話が溢れて、一定の人がそれに煽られるから、真実もどきが増殖する。

そういうわけで、学生や若い人へのアドバイスは単純になる。「真実は」と謳っているものは、とりあえず疑っておけということだ。「真実を探す」とか言う記事を読むと、そもそもの事実誤認だったり曲解だったりする。

「メディアは真実を伝えない」というのは、たしかにそうかもしれない。ただし、その思い込みが強い人は一定数いる。池の魚に餌を撒けばワラワラと寄ってくるように、「マスコミが伝えない」というだけで、寄ってくる人がいるのだから、彼らが満足する情報を書けばそれで成り立つのだ。 >> 学生も大人も感染する「真実もどき」の続きを読む



新聞を巡る課題はとても幅広いテーマだが、人によって見方が全く異なる。

学生などを初め、30代くらいまでは読まない人が多い。一方で、重要な情報源として熱心に読んでいる人ももちろんいるし、「取材して伝える」という基本的機能の潜在力は相当高い。

そうしたリソースをどう活かすか?というのはマーケティング的にも興味ある課題だ。

そうした中で、気になる記事があった。掲載されているのは、読売オンラインの「ヨミドクター」というコーナー。医療関係の読み物が集まっているのだが、その中の「原隆也記者のてんかん記」という連載コラムだ。

この記者の方は転換を患っているのだが、その経緯やいまの状況、あるいは生活の様子や事件への思いなどを綴っている。おなじコーナーには、白血病の記者の闘病記もあって、つまり読売の記者が「個人体験」を記事にしているのだ。

記者による癌などの闘病記には前例もあったが、てんかんは珍しいのではないだろうか。ご本人も書かれているように、人に対して隠してしまうことの多い病でもある。そうした経緯も含めて、いろいろなことが書かれている。とても勇気がいることだし、筆者も会社もよく決断したなと思うが、読むたびにいろいろなことを考えさせられる。

強い主張は、ある意味簡単だ。しかし「考えさせる」記事は少ない。そして、それにこそ大切な価値がある。てんかんは、自動車事故の問題もあり大変にデリケートな面もある。患者が声をあげることも容易ではないし、代弁者も必要だろう。そうした中で、この取り組みは新聞ジャーナリズムの今後のあり方のヒントになると思う。 >> 読売オンラインの「てんかん記」に感じる新聞の可能性。の続きを読む



ライフネット生命のCMが流れていて、アレ?と思った。「ネット保険なのに、電話で相談!?」というというタイトルで、契約者が登場している。調べてみると、他にもあって「ネットだから、いろいろ不安?」というようなCMもある。すべて、契約者が話すという設定で、グループインタビューを映しているような感じだ。

ライフネットと言えば、社名の通りネットに特化して、その強みを最大に活かしてきた。一方で、いまのキャンペーンはある意味で「ネットの否定」である。電話で相談できたり、「あたたかい」という価値訴求は、むしろ国内の大手生保に近い。

このCMは既に昨秋からオンエアしていたようなので、路線変更をしたのだろう。

ライフネットの戦略的はとても明快だった。3Cのお手本みたいなもので、ネットに特化して、競合とは価格面で差別化を図り、顧客は20から30代の都市在住者。かつてのCMなどは、その辺りがわかりやすかったので大学の講義などでも題材にしていた。

ペルソナの設定を丁寧におこなった上でのマーケティングだったと推測する。

その後、競争の激化で新規契約が伸び悩み、KDDIと資本提携をおこなった。この辺りの経緯は、この記事(東洋経済オンライン)などに詳しい。

いろいろと分析記事を見ると、価格優位性が薄れたり、対面型販売への根強い人気など、おもに競合との関係で優位が保てなかったという。その通りだとは思うのだけど、僕が気になるのはライフネットは「顧客からの共感」を高めに見積もり過ぎたのではないか?ということだ。

より合理的な選択を志向する企業姿勢へ共感してくれる人々。それがライフネットの描いた顧客像だったと思う。以前は、価格訴求をする際に「余計な営業コストがかかっていない」ことを訴求して、保険料の内訳を公表した。

もちろん、その姿勢に共感した人も多かったと思うけれども、さて、それは生保の会社選びで強い動機になるんだろうか。 >> ライフネット生命はアタマが良すぎたのか?の続きを読む