気になる数字があった。小沢一郎の新党に対して「期待する」と応えた人の比率だ。
同じような世論調査が出ているのだけれど、朝日が15%読売が16%共同通信が15.9%という感じで、ほぼ同じ。新聞などの世論調査は時には大きく数字がバラついてネットでは陰謀論が渦巻くこともあるけれど、冷静に見ると大体は世論の鏡になっている。
で、この新党について論じるつもりは全くないのだけれど、何で気になったかというと、この「期待する」割合の数値それ自体が、マーケティングを仕事にしている人があれば、「?」という引っ掛かりを持つと思うからだ。
気になるのは、「16%」という数字なのだ。やや差はあるけれど、どうやら期待する人は16%前後。
というのはロジャースの普及理論でいうところの「イノベーター/Innovaters(2.5%)」と「アーリーアダプター/Early Adopters(13.5%)」を足した数字。ここを超えれば一気に普及が広まる目安として扱われてきたものだ。
一方、ハイテク商品の市場を分析したところ、この16%に大きな溝(キャズム/Chasm)が存在するという論考があって、これはジェフリー・ムーアの「キャズム」という本で論じられた。
政治における期待度を。普及理論やキャズムと一緒にするのは、冷静に考えると問題があるのとは思う。そもそも「期待する」と言うことは「購入する」より、遥かに簡単だし。しかし、16%という数字は今後を考えると実に興味深い。
「大きな広がりを持つ一歩手前」なのか、「溝を前にした一歩手前」なのか。
数字自体はあまり盛り上がっていないように見えるが、一方で、今の政党支持率推移を見ると16%という数字は「各政党の支持率の中では最高」というのも事実だったりする。
一方で、この16%という人々がイノベーターであり、アーリーアダプターなのだろうか?というのも素朴な疑問だ。
実は、普及理論によれば、全く遅れた人々「ラガード/Laggards」もまた16%存在しているんだけど、このことについては敢えて突っ込まないことにしておこう。



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企業の評価というのは、多面的になされるものだと思うし絶対的な尺度があるわけではない。たとえばいまオリンパスは大問題になっているけれど、その商品の価値までが否定されるか?というとそういうわけではないよね。
だから、就職の相談を受ければその個人との相性なども含めて具体的にアドバイスすることもあるけれど、講義ではあまり特定の企業の問題点を掘り下げるよりも、メディア・ビジネスの構造について理解してもらうことにしている。
ただ、ここまで騒ぎになると気になると思うので、今日はちょうど先日訴訟のあった件について見てみよう。
(スクリーンで記事とプレスリリースを紹介)
「DeNAがゲーム制作会社に圧力をかけた」ということで、10億以上の損害があったということだ。もちろん、DeNAは反論するだろうし、どちらに理があるかはこれだけの情報ではわからない。
ただし、1つの疑問と仮説を立てることができる。
競合どうしが、有力パートナーを「囲い込もう」と競い合うのは以前からよくあることだ。かつてのゲーム業界もそうだった。ただし、どうして訴訟までするのか。
それが、疑問。

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大学でも企業でも、マーケティングのレクチャをする場合はたいてい人口の話から入る。
国内市場の話が多いので、当然少子高齢化や人口減少に関するデータを見せることからスタートしていくことが多い。
別にマーケティングの世界に関わらず日本の人口問題で話題になるのは、出生率である。これが1.2~1.4辺りで推移していることはよくニュースになる。
しかし、僕が気にしているのは率ではなく「出生数」である。なぜなら、市場の規模を規定するのは人の「数」だからだ。大規模な戦争や疫病のない限り、2011年に生まれた105万人(厚労省推計)が作る市場はかなり先まで見通すことができる。
そして、2011年生まれが減ることはあっても「2011年生まれが増える」ことはない。(移民政策が変更されない前提で)6年後のランドセル需要も、20年後の成人数もある程度読めるわけだ。
そして、出生数という絶対値を調べると意外な風景が見えてくる。
第一次ベビーブーマーはピークが270万人ほどで、第二次でも210万ほどだ。そこから比べると近年の「100万人+」という数字はたしかに少ないように思える。しかし、これを国際比較で見ると意外なことがわかってくるのだ。
2つの表を見ていただきたい。出所は国連のデータ(2009年だがこれが最新のよう)である。出生数を国別に上位から並べると、まずトップがインドで2700万弱、ついて中国が1800万強。1000万超はこの2カ国で、以下、ナイジェリア、パキスタン、米国と続き、日本は25位である。そして、その次からは100万人以下となる。(ちなみに同年の厚労省データでは出生は107万人である。経緯は現時点で不明だが論旨に大きく影響しないのでこの数字を使う)
さて、ここでは中間を略したが出生数の多いのは、概して新興国である。そこで、G8だけで抜き出してみると、別の風景が見える。日本の出生数は、米国、ロシアの次になるのだ。(それにしても先進国でこれだけ出生数が多いことに米国の底力を感じる)。
このデータはいろんなことを示唆している。

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(2012年2月23日)

カテゴリ:マーケティング

フリーランスになって、というよりなる前から気になっていたのは健康のことだった。もちろ大病も怖いが、「風邪で仕事に穴をあける」みたいなことだって、会社員より遥かに気を使うことになる。
仮に一日研修の講師をおこなう日に、インフルエンザになったらどうなるか。そのために全国各地から来ている人もいるのに「自習」とかで済むわけがない。想像するだけでゾッとして体に悪そうなので、想像もしないことにした。
そういうわけで、手洗いとうがい、それに睡眠という基本は風邪予防の基本として有効であることは、とりあえずこの10年くらいの経験から推奨したいと思う。
ところが、どうにも避けがたいことがあって、それは家族に不幸があった時のことである。これこそ、あまり想像したくもないわけだが、昨年の春先に父の余命が半年あまりであることを医師から告げられて、にわかに現実問題となってしまった。
こういう時は冷静さを欠くので、とりあえず非現実的なケースしか思い出さない。たしかバーンスタインが奥さんを亡くした時に日本公演をキャンセルしたことがあったなあ、とか。
だから、どうなるというのやら。
現在のクライアントに、あらかじめ挨拶をしておくことはしたが、「万が一の場合は」を前提にして話すわけにもいかない。知り合いに、こうしたケースでどうしたかを尋ねたが、これといった解があるわけでもなかった。

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コンサルタントやクリエイターなど、企画提案を生業とする人にとって大切な数字は”3”のはずだ。一つのページには「3つの理由」や「3つのポイント」だし、企画案はABCの3点で臨むことが多い。
おさまりがいいのだ。そして、その理由とコツを考えてみたい。これってエントリーシートなどにも使えると思うんだよね。このESもそうなっているし。
まず、「1点勝負」が危ないことはわかると思う。では2案だとどうなるか。
これは、いわゆる「二項対立」という状態になりやすい。モノが2つあると1つの軸が生まれる。そうなると、AとBは、対立して見える。提案を受ける側からすると、AとBの「どっち?」と迫られるわけで、決定する時の心理負担が重くなることもあるだろう。
それで、C案が登場する。この3つ目の案が出てくると対立軸は見えなくなってくる。点が3つで平面が決まり、安定する感じだ。
じゃあ、4つになるとどうか。不思議なもので、偶数になると人は2つに分けたくなるようで、再度軸が生まれたりするのである。そして、5点以上になるとグチャグチャになる。
まあ、そういう経験値から”3”という数字は大変ありがたい。
もう少し細かく言うと、「AとBで対立軸をつくり、Cでその軸をバラす」というまとめ方がいいと思う。

>> 3点揃うと企画が落ち着く理由。の続きを読む