というわけで、今回の課題はタウン・ウォッチングに取り組んでもらったけど、いまもあったように表参道はいろいろと行列ができてます。

日本中、というか今や世界中から観光客が来ますから、どうしても珍しいものには並んでみる。物販もあるけど、やはり食べ物は多いですね。

パンケーキなどは相当前からあって、店舗も複数あるけど、ポップコーンやクロナッツ、そしてかき氷もあるよね。

で、こういう人気店には一定の法則があります。

それは、出している食べ物が「糖分・脂肪・塩分」の3つが絶妙に仕込まれているということです。どれも、人間にとって必要ですが摂りすぎはよくないとわかってる。でも、ついついひきつけられるわけです。

パンケーキだって、バターとはちみつで十分にこの3つが備わってますが、その上にアイスクリームやフルーツ乗せるでしょ。

ポップコーンは油と塩分に加えて、甘いテイストを加えるのが流行りだから、これも見事に3つ揃ってる。

クロナッツのように、クロワッサンとドーナツの組合せは、ある意味最強です。クロワッサンは普通のパンの中でも、バターを相当使ってるから脂肪分は高いし、塩分もしっかりあります。そこに甘い成分をドンと乗せてくるんだから、かなりパワフルだよ。

この3つの要素がいかに人々をとらえて来たか?ということを分析した本が、昨年日本でも翻訳出版されました。米国のジャーナリストが書いた本で「フードトラップ」という邦題なんだけど、原書はずばり”SALT,SUGAR,FAT”、つまり「塩・砂糖・脂肪」です。

この3要素を米国企業が、加工食品にどう取り入れて来たか、それがいかに消費者を魅了してきたか、ということが明らかにされてます。

こうした要素は意外なところにもあって、セブンイレブンの「金の食パン」は、砂糖、マーガリン、クリーム、はちみつが入ってます。もちろん、塩分も。実際食べたら甘みが強くて驚いたけど、そりゃそうだよね。僕は苦手ですが、ヒットした商品です。

やはりこの3要素が一体化すると強い。牛丼なんかもそうですね。

ただ、こういう甘いものを食べる人が増えているかというと、実際に1人当たりの年間砂糖消費量の統計ではそうではありません(グラフ:農畜産業振興機構の資料より/単位kg)。日本は世界各国で見ると低い方です。中国はさらに低いけど、これは伸びる余地があるかもしれないし、インドは意外と高いのですがアジアは相対的に低い。

一方で先進国は横ばいか減少ですが、米国が上がってフランスは下がってる。表参道の店も米国発が多い。また消費量がダントツに高いのはブラジルですが南米は総じて高く、欧州ではベルギー。

いずれにせよ、現象を見たら今のように構造化して、かつ砂糖消費量統計にあたる。すると表参道の流行りは「糖分・脂肪・塩分」でできているけど、日本人全体としては砂糖の摂取は上昇してないので、「たまには食べたい」からこそ行列してみるという心理が見えてきます。

表参道はいずれにせよ先端の動きがみられるし、そういう意味で青学の立地はマーケティングを学ぶには情報の宝庫だよね。

(2015年前期 青山学院大学の講義より)

 



まあ、安保法案や新国立競技場やギリシャ問題やら、そりゃたしかに「賛否」を問う話は多いんだけど、それにしても最近のネットニュースの見出しは、やたらと「賛否」が多いと思うわけ。

たとえば、こんな感じ。

「父の日イベント中止? 理由に賛否」これは、家庭の事情でお父さんがいないこともあるから。まあ、これは賛否あるだろうな。

「『ドッジボールは暴力』に賛否」まあ、これもわかる。

いずれも、それなりに社会の話だ。

でも、この「賛否」というのもtwitterあたりの声をザクザクと拾って、つぎはぎしてるだけだったりする。そして、賛否はそれだけじゃない。

「女の子の頭をなでるゲームCMに賛否両論」これはゲームの話。

「やりすぎ? とんねるずに賛否」これはテレビの話。

そもそも、テレビやゲームは別に見なくてもプレイしなくてもいいようなもので、賛否を問うもんじゃないだろ、と。そして、ついにこんな見出しが。

「熊切あさ美の『別れていない』にネットでは賛否」

もう、何が賛否なんだか。賛辞の方が文は通じる。まあ、実際は惨事のようだけど。

法案や政策など、それによって自分たちの生活が大きく影響されるなら「賛否」というのも普通だ。学校の行事も、決められちゃえば逃げられないので議論にはなる。

でも、タレントのやったことやコンテンツというのは、別に関係ない人にとっては、相当どうでもいい。じゃあ、なんで「賛否」とかつけたがるのか。

単純に言って、ついつい見出しのクリックが増えるのかもしれない。ただ、それ以上の意味合いが、この「賛否」という言葉にはある。それは「これは皆が気にしているんだよ」という記号として、機能しているのだ。

マスメディア研究で「議題設定(agenda setting)」という機能がある。つまり、世の中の人が「これが重要だ」と思うのは、マスメディアによって影響されるという話だ。

ネットの時代になっても数をとろうとすれば、「これが重要だ」ということをアピールすればいい。

そして、賛否がわかれることに自分の意見を言えることが賢い、と錯覚しちゃう人がいれば、まだこういう見出しは続くのかもしれない。

でも、それの行く末が「熊切あさ美」であれば、あまり賢そうだとは思えない。

それにしても、そうやって話題つくって煽ることやってたらマスメディアと同じだし、ネットメディアならではの価値はどうなるんだ?とかいうことは、多分考えられていないんだろう。

そこで「賛否」が問われた形跡は、見当たらないんだけど。でも、そのうち出るかしら。

「ニュース見出しの『賛否』に賛否」とか。

 



7/3の日経電子版で音楽の定額配信サービス関連の記事で、ソニーミュージックエンタテインメントの元社長丸山茂雄氏のインタビューがあった。

印象的なのは、あっさりと「音楽の時代は終わっている」と言っていたことだ。
「もう明白で、みんながそろそろ気づいていいと思っているわけ。かつて音楽っていうのは、LPとかCDとかに入っていた。そこから聴こえる音だけで満足で きるっていう世代は、たぶん70代から40代、ぎりぎり30代まで。それより若い人は音で楽しむという習慣がない。映像が主で、音楽が従という新しい類い のソフトコンテンツにメーンが移っている。」
何でも「~離れ」というのもあまり賢そうな議論には見えないけれど、この現象は自分のような世代にとっては直感的にわかる。それは「コンテンツの私有」という概念で説明できるように思っている。

物心がつくと「自分のもの」が欲しくなる。子どもの頃は玩具や自転車などで、段々と「コンテンツ」を私有したくなる。本というのもコンテンツだが、教科書を含めて「上から与えられるもの」だ。やがて中学生になった頃から「自分だけのコンテンツ」を求めるようになる。そのコンテンツ再生のマシンとともに。

かつては、それが音楽だった。まだレコードの時代で、その再生装置は「家の備品」であることも多い。自分だけのモノにするには、カセットに録音してラジカセで聞く。ラジカセを欲しかったのは、「コンテンツを私有したい」という欲求があったからだった。そして、そのコンテンツは「音楽」しかない。 >> 「誰もが音楽好き」という時代の終わり。の続きを読む



大阪都構想が住民投票により僅差で否決された。

翌朝にあると、facebookなどでは驚くほどいろんな声が飛び交っていたが、出口調査の年代別の賛否を見て「高齢者に負けた」という声が多かった。ただしよく見れば、事情は少々違うのではないか。

高齢層に反対が多いことはわかっていたはずなのだから、他の年代を「説得し切れなかった」ことが敗因だろう。今回もそうだが、選挙でも高齢層が投票率は高い。ただ若年層の棄権層がもう少し動けば、今回の票差は覆った可能性もある。高齢層に負けたというなら、不戦敗と言った方がいい。全国の人口推計でいえば、70代は20代より10%ほど多いが、それ以上に投票率の高さがものをいう。これは2年前にも書いておいた

この際のグラフでは、実数で作っているが、出口調査では各年代とも「同じ幅」にしている。それだと実態がわからないけれど、そういうデータがどんどんシェアされてしまう。

ただし、ネットでは「老害」「シルバーデモクラシー」と言った方が、話が早いようだ。どういう切り口にすればアクセスが増えるかは、すぐにわかる。どんな調査でも若い方がネットをよく使うのだから、ネット上では「高齢者に押しつぶされる若者」という方が受けはいいのだろう。 >> 「老害」という言葉への引っかかり。の続きを読む



今日はメディアとの「つき合い方」について、具体的にケースを見ているわけだけど、さっきの「8.6秒バズーカ」などを見ていると、ネットの情報も相当危ういものが、したり顔で飛び交ってることがわかると思います。

では、テレビはどうか?ということで、これもちょうど昨日のケースなんだけど見ておきましょう。

TBSの番組で、いろんなランキングを分析していているものがあって、僕はたまたま見たんだけど、昨夜は「インスタントラーメン一番食べる町」ということでした。見た人いる?(教室内ではゼロ)。これは総務省の家計調査をもとにして、取材をしているんだけど、インスタントラーメンの1番は「青森市」でした。

ちょっと、理由を考えてみてください…「寒い?」「面倒くさい?」なるほど、番組の取材から出てきたのは「塩味の強いものが好き」「B級グルメが多い」「面倒くさがり」の3つからでは?と言ってました。寒さも関係しているみたいだね。

で、皆さんこのことを聞いてどう思う?青森の人について気になりませんか?

インスタントラーメンだけではないけれど、「塩気を好んで面倒くさがり」って、あまり健康的ではないでしょ。一応番組でも「肥満率が高い」ということは言ってました。

ただし、この番組ではそれ以上は突っ込まない。「青森の人はインスタントラーメン好き」ということで、「ヘェ~」ということで、おしまいです。

さて、では実際に青森の人々の健康状況はどうなのか? >> 「青森はインスタントラーメン好き」とテレビでやっていたけど、その先を考えてみた?【講義覚え書き】の続きを読む