広告会社にいた頃、新卒採用の面接をしている時に最も多い志望理由の一つが、

「人を動かす仕事がしたい!」というものだった。

「ウ~ン、たまには“人に動かされたい!”って学生来ませんかね~」

「オオォ!そりゃ、即採用だよ」

何て会話をした記憶もある。そう、「人を動かしたい願望」があって、マーケティングやメディアに関心を持つ人は多いのだ。実際は、そうとう「動かされる」毎日なんだけどね。

本田哲也、田端信太郎両氏の共著「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい」を読んで、ふとそんなことを思い出した。この本は、夏休みに入る前にkindleでダウンロードしていたのだけど、帰宅したら著者からご恵送いただいていた。ありがとうございました。

で、「人を動かす」というと、カーネギーの有名な著作がある。この本はマネジメントについて語っているので、どちらかというと「目の前にいる人を動かす」話が多い。
一方で「メディアを通じて」人を動かす時の作法は当然異なってくる。今までの広告会社が「人を動かす」をいう時は、企業がマスメディアを通じて行う活動が殆どだった。

その場合、「誰が言っているか」というと、まあ当たり前のように「企業」である。だから、それを前提にして「何を言うか」を必死に考えてきた。それが、いわゆる「コンセプトメイキング」であり、コピーだ。

ところが、ネット上の「情報爆発」が起きてくると、「何を言うか」の差別化が難しくなる。そうなると「誰が言っているか」が、関心の的になってきた。それは、有名人かもしれないし、匿名の誰かかもしれない。山ほどあるダイエット法などを振り返れば、よくわかる。

言っている内容は「食生活」か「運動」の改善しかない。ただし、「誰が言っているか」によって相当影響は変わってくる。

人は、他者の影響を受ける。それは「目の前の人」かもしれないし、「メディアの向こうにいる企業」かもしれない。ところが、当然その間には無数の他者がいて、それぞれが微妙に「知ってる人」だったり「知らない人」だったりする。 >> 「人を動かしたい」について改めて考えてみた。の続きを読む



夏の休みに入ってる。とはいっても電波の届きにくいところでダラダラ休んでいるだけなので、じゃあ久しぶりにブログでも書こうかと。10メートルくらい歩くと電波つながるし。

ちょっと前の話だけれど、資生堂のマーケティング改革がニュースになっていた。エリクシールに関する記者発表に関連して出てきた話だけれど、ちょっと驚いたのは「100人をめどに、ブランドマーケティングの経験者を採用する方針も明らかになった」ということ。

資生堂の海外売り上げは50%くらいなので、この採用数もグローバルでの数字だろうが、国内でも相当採用することだろう。ただマーケティング経験者、しかも「ブランドマーケティング」となると、なかなか物入りだと思う。「経験者」はいるかもしれないが、資生堂の基準を満たすスキルを持っている人はどれだけいるのだろう。

もし自分が転職支援のエージェンシーにいて、この案件をもらえば「よし、チャンス!」と思う一方で、「こりゃ大変な案件だよな」と感じるだろう。

一方で、エリクシールのプレスリリースを読むと、方向は明快だ。

>> 資生堂のマーケティング、が気になる。の続きを読む



(2014年5月21日)

カテゴリ:メディアとか

 

少々前の話なんだけど、久々に見たフレーズが、これ。
「産業革命に匹敵するビッグデータ革命のインパクト」
そう「産業革命に匹敵」って、結構あちこちで見たよなあ、と。で、ついにビッグデータですか。そうですか。

そもそも、「産業革命に匹敵」というフレーズは、IT革命や情報革命を指していることが多かった。それは、まあわかる。実際に、匹敵したかどうかは後世の人が決めることだと思うけれど。

でも、産業革命もこの10年で相当インフレしたと思う。いったい、どんなことが「産業革命に匹敵」したのか、googleでフレーズ検索をしてみた。

一番上に出てくるのは、先の「ビッグデータ革命」の記事。そして、IT革命などは予想通り出てくる。でも、他にも、結構あるんだよね。

まず「シェールガス革命」「環境革命」「低酸素社会」など。たしかに産業革命は現在の化石燃料エネルギー依存と深く結びついているから言ってみたい気持ちは分かる。ただ、それを言うなら原子力エネルギーも相当インパクトはあっただろう。

そのほか、「クリエイティブ・クラス」も匹敵するらしい。2007年の米国の記事だ。リーマン・ショックの前の世界は、なんだかフワフワしていたんだなあ、と思う。

>> 産業革命に匹敵!の続きを読む



いまさらこんなこというのも変だけど、マーケティングや広告、そしてメディアにかかわるビジネスって、「都市の仕事」だと思う。典型的な「都市型ソフトウェア」というんだろうか。

人と情報が集積しているから、新しい潮流が生まれる。

ただ、実際のお客さんは世界のあちらこちらに暮らしている。だから、マーケターが都市に暮らして働くのはいいけれど、その世界がすべてではない。

でも、最近マーケティングや広告、メディア界隈の人が見ている世界が、限定的になっているようにも思う。

何というか「中目黒のマーケター」という感じの人が多くなりすぎている気がするんだ。

もちろん、中目黒に住んでいるとかオフィスがあるとかいうわけではない。生活様式全体を象徴する街としてなんとなく「中目黒」な感じなのだ。

イメージだと、もちろんiphone持ってて、アップルファンで、酒はそこそこ、飲むならヒューガルテン、焼肉を好むが最近は熟成肉に流れ、クルマは持たずに自転車乗って、ひょっとしたら東京マラソン出るくらいアクティブで、買い物はネットで、春が来れば目黒川の桜をfacebookにアップしているような人たちだ。共働きも多い。京都も好き。

オフィスが都心から西南方面が多く、利便性で住居を選ぶので通勤時間は短い。

というようなイメージで、別に中目黒から恵比寿界隈が似合いそうな人なんだけど、一方でイオンには行かないし、というか近くにないし、地上波は見ない。

別に、それでもいいかもしれない。ただ、イオンやヨーカドーというのはメーカーでマーケティングしている人にとっては、とても重要な存在だし、地上波のCMもまた最大の広告媒体だ。

>> 中目黒のマーケター、について。の続きを読む



(2014年5月13日)

カテゴリ:メディアとか

少々前のブログだが、「サラリーマンが目先のベアより社会保障の抜本改革を要求すべき理由」という記事のことが気になっていた。内容は、的確だと思う。社会保険の企業負担の厳しさというのは既に相当なものだ。健康保険、厚生年金はもちろんだが、児童手当なども企業負担分がある。

個人負担の増加は話題になりやすいが、企業負担はどことなく他人事に感じやすい。しかし、企業負担は「人に払うカネ」であるから、結局は給与の抑制につながっていくわけだが、あまりメディアも取り上げない(日経は今春記事にしていた)が、重要な論点だと思う。

ただ僕が、この記事を読んで気になったのは、内容の主旨ではない。最初の方にある文だ。

「強欲な経営者でも資本家でもなくて、サラリーマンの目下最大の敵は高齢者ということになる。」

これ自体、あまり目新しい議論ではないかもしれない。高齢者が若者から搾取している、というような話はネット上ではよく目にする。

もちろん、財の移転という意味では正しいだろう。でも、僕はこういうフレーズに頷けない。こうした「割り切り」はネット上ではよく目にするけれど、いろいろと大事なことを捨て去っている気がするから。

>> 高齢者は若者の敵なのか。の続きを読む